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癸卯を迎えて“和”を思うー令和5年の感慨

 新年おめでとうございます。皆さんは2023年の新春をどのような思いで迎えたでしょうか。今年の干支は癸卯(みずのとう)です。うさぎは古くから月との縁も深く“つき”を呼ぶ縁起のいい動物といわれます。そんな幸運な一年になることを真に念願したいです。

 さて,今日は「和」をめぐる話をします。新年を迎えるにあたり「和」という言葉に思いを馳せました。2022年を表す漢字が「戦」だったからでもあります。

 繰り返しにはなりますが,今こうして当たり前の日常が送れているという事は,実は奇跡的な幸運だというのが世界の現実だということです。そのことを皆さんも体験的に身にしみて実感するはずです。世界を見渡せば地球温暖化や気候変動,食糧問題,自然災害,ウクライナの戦争,コロナパンデミックなど,予想を超えた多くの事態に直面しています。このことに無関心ではいられません。なぜなら,自分たちだけが危険から守られ,安全に生き延びるということは到底あり得ないことをよく知ったからです。和―調和や安全とは,他者や他国とのバランスの中で保たれる状態であり,相互の努力によってもたらされるものです。

 今ここに掲げた「和」とは,全体の調和であり世界の平和でもあります。さらに和には和服,和食など日本の独自性の意味も込められています。2023年はそれぞれ個性を発揮しながら,調和と平和を大切にしていきたいと願います。しかしそれらは誰かが授けてくれるギフトではありません。私たちの強固な意志と不断の努力によってしか実現し得ない高い理想です。そのことにぜひ心を寄せて,未来を描いてください。

 最後に,「和」に関わる2つの格言を紹介します。1つは「和をもって貴しとなす」いさかいなく仲良くするということが貴し。貴しとは最良の価値であるという意味です。論語や聖徳太子の宣言にもある社会の理想で,皆さんも聞いた事があるかと思います。

 もう1つは「和して同ぜず」というこれも古代中国の格言です。君子は周囲と仲良くすることを大切にするけれども同ぜず。安易に同調しないという強固な態度です。皆が言うから私も賛同するというのは,周囲に流され主体的ではありません。全体の和を尊重しつつも,自分自身の考えや判断をしっかりと持つべきだという格言です。

 今年度もあと数ヶ月となりました。3年生は高校生活のしめくくりでもありますので,新しい年にあたり「和」の精神とともに,それぞれにまだ眠っている可能性を自ら育て上げてください。そしてそのためにやるべき事とは,毎日の授業そして目の前の生活を誠実にこなしていく地道でひたむきな努力です。近道はありません。皆さんの大きな夢が毎日の積み重ねで花開いていく事を心から祈念し,休み明けの講話といたします。