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「命」に触れる学び-コロナ禍の学校生活

 新入生54名を迎え,令和4年度が始まりました。拡大が続く新型コロナ対策の中で,生徒の皆さんは毎日の授業をはじめとした実習や学校行事,部活動にも意欲的に取組んでいたと思います。

 今年5月には3年ぶりとなる全校田植えを実施しました。心を一つに農業高校ならではの伝統行事の「誇り」を体感することができたのではないかと思います。皆さんの真剣な眼差しと団結の笑顔こそが本校の活力の源だと実感した次第です。

 部活動では,地区総体及び県総体が無事開催となり各部大いに健闘しました。特に相撲部の6年ぶりンターハイ出場。また農業クラブでは,平板測量競技で二連覇を達成。他にも5年ごと開催の全国和牛共進会高校の部出場で優秀賞や意見発表県大会優秀賞,情報処理競技優秀賞など,皆さんの生き生きとした活躍が各所でありました。皆さんの活躍を頼もしく思う反面,加美農生の底力ならば,もっともっとできるはずだという欲も湧いてきます。自分の可能性を限定し決め付けるのはもったいない。精根尽き果ててはじめて自分の限界が分かるのです。挑戦する精神にこそ道が拓けます。失敗を恐れずにチャレンジする精神を。特に3年生は最後の仕上げの夏です。自分の未来にしっかりと向き合い,悔いのない夏休みを過ごしてください。

 さて,今日は「命」というテーマで話をしたいと思います。皆さんは日々の学習や実習を通じて,多様な生き物の「命」と向き合っています。そして世界に目を向ければ,コロナ感染によって亡なる方,自然災害や戦争の犠牲で命を落とす方もいます。こうした生と死の現実をどう考え,何ができるのかということは,これからも考えていってほしいテーマです。なぜなら,そうした知らない人の生活や命と,私たちの命とはどこかで繋がっているかもしれないという思いがあるからです。現代の生物学の知見によれば,DNAの解析によりこの地球上に現存する生物は一つの祖先の子孫であるという研究成果がありました。もしそうだとすれば,すべての生命が種別や国境を超えて繋がっているとも言えるのです。

 農業教育の根本は命に向き合う学習です。私は命と向き合いながらひたむきに生きている人が一番尊いと思っています。これから社会を担う皆さんはそういう自信と自覚を持って生きていってほしいと思います。

 先日ある本を読んでいて「命は誰のものか」という一文と出会いました。「あなたの命はあなたのものではない」というのです。自分の命は自分ものだと確信的に思い込んでいたのですが,そうではないのだと。それは近代以降の発想であって,あなたの命はあなたが作ったものでも,ましてや買ったものでもない。確かに与えられた命なのです。私の解釈は,自分の命は自分のものだけれども,自分だけのものではない,多くの縁ある人との繋がりの中にあるという考えに至りました。

 長引くコロナ感染という先行き不透明な時代の中で,いまなお不安がある人も多いと思います。しかしながら,こうした困難時代だからこそ,自分と周りの人の命を大切に思いながら,これからの人生を力強く切り拓くための言葉=信念が持てるような知的冒険をしながら,有意義な夏休みを過ごしてほしいと切に願います。

 以上で,休み前講話を終わります。夏休み明けにはまた全員元気に再会しましょう。