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2023年4月の記事一覧

令和5年度 入学式式辞

 ただいま,入学を許可いたしました農業科20名,農業機械科18名,生活技術科8名の新入生の皆さん,入学おめでとうございます。皆さんは高校入試の関門を突破し,本校入学の日を待ち望んでいたものと思います。新たなステージとなる高等学校が今日スタートします。本校には耕心寮という素晴らしい寮教育もあります。自己を高める教室・農場とともに,共同生活の場である寮があり,本校は三つの教育機能を有しています。志を同じくする仲間とともに,学習や行事を通してこれからの未来を力強くしなやかに描いていってほしいと願います。教職員・在校生一同,新入生一人一人を心から歓迎するとともに,加美農生として共に学べる喜びを実感しているところでございます。

 さて,加美農業高等学校は,明治33年の開校以来,今年で123年の歴史を刻んで参りました。長い歴史と伝統を誇る本校は,農業のスペシャリスト育成を担うため,地域の皆様からの期待に応えるべく日々進化していくことを使命としております。その使命を実現するために,自身の心を耕すという意味で,『耕心』という言葉が校訓となっています。土を耕すのと同じように心を耕す。本校はこの校訓のもと,地域を支える有力な人材の育成を目指しております。これまで実に多くの卒業生が,地元はもとより,県内外,各方面で活躍されております。また本校の長年の取組に対して昨年度,キャリア教育優良校として文部科学大臣表彰を受けました。これは特に,地域連携,異校種間連携による農業教育の充実と郷土愛の醸成,産学官連携によるブランド米の創出など学校の枠を超えた取組を行っていることへの評価でした。新入生の皆さんも,今日から加美農業高校の一員として常に高い志を持ち,多くの先輩方と同じように,社会の中枢で活躍できる有能な人材として未来に羽ばたいていくことを期待しています。

 ここで,これからの本校を担う新入生の皆さんに,メッセージを二つ贈りたいと思います。

 一つは,「〈生命〉の尊重」ということです。

 加美農では,他校にはないこの広大なる自然の中で,生きとし生けるものすべての生命を慈しみ,尊重する学習が日々展開されています。農業教育の根本は命に向き合う学習です。自然や生き物の命を慈しみ,ひたむきに生きている人がもっとも尊いのです。自然の中で,教室の中で,寮の中で,自然や生き物そして何よりも自分自身との対話を通して,ゆるぎない自己を確立していってください。本校での学びは,必ずや皆さんの夢の実現のための礎となるものと確信しております。

 そしてもう一つは「〈自己限定〉を打ち破る」ということです。

 高校生活において心がけてほしいこと,それは「私はここまでだ」とか「どうせ自分は」いった自己限界を取り払い,自身の無限の可能性を信じて掘り下げていく粘り強い精神を持っていてほしいのです。それが高校生に与えられた特別な権利=青春の特権なのです。

 これまでの3年,未知のウィルスの出現は世界の日常を一変しました。皆さんの中学校生活も思い描いたようにはいかないことも数々あったろうと思われます。そうした中にあっても,人間の生命力と回復力は無尽蔵なのです。人類は逆境を乗り越える復元力を備えているからこそ,幾多の苦難を乗り越え,今日まで営々と生活を築いています。それゆえ,皆さんにとっての高校入学は新たな誕生=《再生》ともいえるのです。恐れることなく,新しい自分探しの旅に出てほしいと思います。

 さて,農業には人と人,あるいは人と土地を繋ぐ,〈関係を育む力〉を有していると言われます。農業とは人間の命の営みを支える分野であるとともに,人と人の心をつなぎつき動かすダイナミズムをも有しています。だからこそ,農業を通じて人と人がつながり,農業の分野から世界の本質が見えてくるのです。これからの未来に豊かな実りが実現できるように,私たちは繰り返し希望の種を蒔き,大地に根ざす力を尊び,堂々と理想の志を掲げ続けていかなければなりません。そのためにも,本校校訓「耕心」が示す,よく土を耕そうと志す者はまず心を耕さねばならないという学びの本質を,本校の広大な自然環境の中で実現していくことを心から願って止みません。

 最後になりますが,保護者の皆様に一言お祝いを申し上げます。改めましてお子様のご入学おめでとうございます。これまで大切に育ててこられたお子さまが生き生きと,実りある高校生活が送れるよう,教職員一同,誠心誠意尽くしていく所存でございます。学校とご家庭が同じ目線。同じ願いを持ちながら,一人一人の成長を促していけますよう,ご協力のほどお願い申し上げます。

 最後になりますが,ご来賓の皆様並びにご参列の皆様に,今後とも本校の教育活動に対しまして,なお一層のご理解とご支援を賜りますよう重ねてお願いを申し上げまして,式辞といたします。

令和5年度 始業式あいさつ

 先ほど新任式にて,17名の新転任の先生方を紹介いたしました。

 また本日午後には,46名の新入生が入学してきます。新入生は高校生活への大きな期待と同時に不安も抱えているはずです。先輩である皆さん一人一人の溌剌とした姿が,本校生のお手本になります。後輩を導くよき先輩として後輩を暖かく迎え入れてほしいと思います。 そして私自身,加美農でのこの1年の間で多くことを教えられ感動ももらいました。また皆さんの真剣な取り組みを目の当たりにしてきました。今年度新たにお迎えした先生方とともに,加美農の新たな歴史を築いていってほしいです。

 始業式にあたり,私から皆さんへ2つのメッセージを伝えます。

 1つは,新年度からマスクの着用も含めて,新型コロナウィルスへの対応は大きく変化しました。学校では,引き続き感染対策はしながら,マスク着用については原則的に任意とするものの,引き続き周囲への思いやりのある行動をお願いします。特に,学校行事・寮行事についてはフルに戻し推進します。そのためにも,皆さん一人一人の日頃の頑張りが必要です。準備も含めてやるのは皆さん自身です。なぜなら,学校行事は本来生徒のものだからです。失敗を恐れず,仲間と協力し,2倍の努力,1人2役3役で,果敢にチャレンジしてください。成長し変化し続ける皆さんに期待しています。

 2つめは,本校と韓国の繋がりについてです。

 韓国水原市にある,水原農生命科学高校は本校の姉妹校で,30年以上にわたり交流を深めてきました。2年ほどコロナで途絶えましたが,昨年度リモートによる交流再開を果たしました。今年度秋には韓国から高校生が来校し,様々な学習・文化の親善交流を行う予定となっています。ぜひ楽しみにしてほしいのと,できるならば,韓国語を習得したり韓国の歴史文化(もちろん,日本についても伝えられるように)予習をしたり,個々人で勉強をしていてほしいのです。近くて遠い見知らぬ国ではなく,同じアジアの隣国として,相互理解を深めお互いに平和を築いていくことが重要です。

 1つのエピソードをご紹介します。

 本校バイオ棟前に,1本の梅の木が植えられています。物語は,今から400年以上前の豊臣秀吉の時代,仙台藩伊達政宗も3千の兵を朝鮮に出兵するという歴史がありました。朝鮮出兵です。政宗はその際に梅の木を持ち帰ったとされ,それを松島瑞巌寺の境内などに植えたといいます。その姿が「臥せた龍」に似ているところから「臥龍梅」と名づけられた紅白対の見事な梅の木があります。

 かつて,韓国からの高校生が瑞巌寺を訪れた際に,「この梅の木をぜひ里帰りさせたい」と熱望したそうです。その思いに応えようと,加美農生は本校バイオ部門での知識を活用して,許可を得て瑞巌寺の梅を接ぎ木をし,生長点から多くの苗を育てたそうです。それを翌年,加美農生訪問団が韓国の高校へ持って行き,その苗が校庭に植えられたと聞いています。接ぎ木した記念の苗が,両校の親善友好の証として今も大切に育てられているのです。今から30年も前のお話です。

 あらためて本校校訓「耕心」の原点に立ち返り,土を耕すように,自らの心を耕していくことそれは皆さんの一生の財産となるはずです。人の2倍の努力,1人2役以上で令和5年度加美農の主役となり,学習,実習,部活動,寮生活,農業クラブ・家庭クラブを盛り上げていってほしいと思います。