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校長通信「耕心だより」

令和5年度休み明け集会 <<甲辰を迎えて平和を想うー令和6年の感慨->>

 新年おめでとうございます。

 2024年の干支は甲辰(きのえたつ)です。辰は万物の活力や成長を象徴するとされる空想上の生き物です。今年はどういう1年にしようかと考えている元旦の、午後4時頃。石川県能登半島を震源とする地震が発生しました。マグニチュード7.6、最大震度7の巨大地震です。家を失い現在も厳しい寒さの中で苦しい避難生活を余儀なくされ、生活物資も届かない地域もあると報道されています。東日本大震災を経験した私たちにとって、他人事ではありません。能登の地震で犠牲になられた方への哀悼の意と、1日も早い支援と回復を祈るばかりです。今私たちに必要なことは、北陸地方で被災した皆さんへ〈連帯〉の思いを寄せながら生活することだと思います。ぜひ心の中にそういう人がいることを留めてください。

 このように,人生には思いがけない苦難が何度も押し寄せてきます。昨年の世界を見渡しても、異常気象や自然災害、紛争、そして長く世界を閉塞させた感染症コロナウィルスの繰り返しの猛威など、世界は想像を超えた事態に繰り返し直面しています。そしてその都度、世界の人々は国境を越えて英知を寄せ合い、助け合って連帯を志向してきたのです。そういう共生の意志がなければ、世界は今日のような日常生活は迎えられなかっただろうと思います。

 さて年が改まり、加美農の歴史をさらに前に進めていきたいと念願しています。特に3年生は高校生活の最後の仕上げとなります。加美農での学習の完成を目指し悔いのない日々を過ごしてください。本校での学びは必ずや皆さんの永い人生を支える土台となるはずだからです。1・2年生も主体的になって学習の総仕上げをして年度末進級に備えてください。しっかりと伝統継承してください。

 最後に、皆さんにお知らせがあります。来週本校に韓国から約30名の訪問団が来校します。どんな人たちが来るのかというと、韓国の小中高で教える学校教員、韓国政府教育部の人たちが日本の学校がどういうものであるのか学校教育の現場を見に来るのです。なぜ本校に来るのかと言えば、長く韓国交流の実績がある本校がそれに相応しい日本の学校として選ばれたからです。本校は1991年から水原農生命科学高校の姉妹校として30年以上にわたり日韓交流を重ねてきました。さらに本訪問は単なる見学ではありません。その目的は日韓の〈友好と平和〉の実現です。国連の文化教育機関であるユネスコを通じて、その崇高な理念に賛同する人たちが来校するのです。ユネスコ憲章には次のような文言があります。「戦争は人の心の中で生まれるものであるから、人の心の中に平和の砦を築かなければならない」、そして「相互の風習と生活を知らないことは、人類の歴史を通じて世界の諸人民の間に疑惑と不信を起こした共通の原因であり」、「この疑惑と不信のために」戦争が起こったのだと言います。つまり戦争とは、人々の心の中に生じた不信感のあらわれであり、そうならないためにも、相互の文化交流及び教育の実現によって人間の〈尊厳〉を自覚することであると言います。〈平和〉とは誰かからの贈り物ではなく、異なる立場や考えを結びつけ共に連帯しながら、意志的に手を取り合ってようやく実現する創造物なのです。

 その意味で、本校生への大いなる期待を抱いて多くのお客様が来校します。最大のおもてなしを総動員してお迎えし、韓国語での授業や歌も準備してくださっているそうです。新しい人との出会いと親善交流、ゆるぎない友好平和を確かめる1ることを心から願っています。

 以上、年始の講話といたします。

 

2024年1月9日      

加美農業高等学校長 根岸一成