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校長通信「耕心だより」

後期始業式あいさつ

 記録的な猛暑が続いた夏も過ぎ、校地内を見渡せば5月に全校で田植えた若々しい苗もすっかり色づき、頭を垂れるほどの実りを迎える季節となりました。

 令和5年度も折り返しとなります。年度始めに立てた目標がそれぞれあったと思いますが、目標達成のため切磋琢磨しながら仲間とともにさらに高め合っていってください。特に3年生は進路決定の大事な時期です。健康管理もしっかりとしてください。

 今月25日からは熊本県において日本学校農業クラブ全国大会が行われます。今年度本校から、平板測量競技、家畜審査競技、農業鑑定競技の3種目に出場します。全国の大舞台でぜひ加美農生の自信と誇りをもって頑張ってほしいと思います。これまで培った練習の成果を遺憾なく発揮し、校訓「耕心」の精神で困難を乗り越え、栄冠をつかんできてもらいたいと念願しています。

 次に、2023かごしま国体に出場する相撲部の選手。選ばれた誇りを胸に、加美農代表として、また宮城県代表として堂々と挑んできてください。ここ色麻の地から遠く鹿児島県奄美市へエールを送りたいと思います。全国レベルで戦える喜びをかみしめながら全力を尽くしてほしいと思います。 

 そして今月には加美農祭が開催されます。特に、今年度は特段の制限を設けずに、校内発表だけでなく一般公開も通常形式で実施を計画しています。また初日には3年に1回の花火打上げも盛大に行います。地域の方に加美農生の笑顔と元気をぜひ見ていただきたいというのが一番の願いです。全校生徒心をひとつに、心の奥底に残る思い出となる行事にしてください。学校行事は皆さん自身が主役となって作り上げるものです。学科や学年を超え一致協力していってください。

 今日もう一つ、皆さんにお伝えしたいのはジェーン・グドールという研究者のメッセージです。イギリス生まれのチンパンジー研究の先駆けとなる学者でかつ、2002年に国連ピース・メッセンジャーとして任命され現在89才にして世界各地を精力的に巡り発言を続けています。グドールさんはこう言います。

 今の世界は閉塞感に満ち、人々は希望を失っている。今後私たちは間違いなくより暑い気候に適応しなければならない。暑すぎて作物が育たず気候難民が増えるでしょう。動物たちも移動するか、死んでしまう。気候危機は日増しに大きくなっているのに、人間は穀物を育てるために森林を開拓し、化石燃料を使った穀物を動物に与え、その肉を食卓に届けている。なぜ高い知性を有する人間が自ら地球環境を破壊し続けるのだろう、と訴えています。しかしながら、私たちは数々の障害を乗り越え、光に辿り着かなければならない、と。

 そしてこう続けます。「希望」それは類人猿から進化した人間という奇妙で矛盾だらけの生き物が手にした「究極の善」である。だからこそ私たちは「希望」を手放してはならない。希望は行動となり世界を改善していく原動力となる、その証の一つが「若者の力」なのだ、とも述べています。

 自然とともに農業を学ぶ皆さんの、さらなる成長を心から期待して後期始業式の講話といたします。

 

(参考文献)  『希望の教室』 ジェーン・グドール著・岩田佳代子訳(海と月社)

         朝日新聞インタビュー「エコグリーフの若者へ」2023年8月3日