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校長通信「耕心だより」

令和4年度 後期始業式あいさつ

 早いもので校地内を見渡せば,春に全校で植えた若々しい苗も大きく色づき,頭を垂れるほどの秋の実りを迎える季節となりました。

 令和4年度も折り返しの6ヶ月が過ぎました。年度初めに立てた目標がそれぞれにあったと思います。学習・部活動・クラブ活動・進路などどれくらい目標に近づくことができたでしょうか。また,新型コロナウィルス感染第七波の終息はまだ先の状況ではありますが,この未知のウィルスとの“共存”を前提に,日常生活を安全に上手に営んでいく心構えが必要と思います。今後も周囲への思いやりの気持ちで感染対策を今しばらく継続してください。特に3年生は進路決定の大事な時期ですので,健康管理もしっかりと行ってください。

 今年度の加美農祭は「校内発表」だけでなく,翌日「一般公開」も実施予定で計画をしていきます。多くの方々に,本校の教育活動の成果や,加美農生の活躍ぶりをぜひ見ていただきたいというのが一番の理由です。全校生徒心をひとつにして,この最大の行事を成功させてください。主役はここに居る皆さんです。そして,収穫感謝祭や伝統の寮祭も予定どおり行います。農作物の収穫に感謝し,皆さんたち丹精込めて育て上げた自然の恵みを皆で共に味わいたいと思いますので,楽しみに盛り上げていってください。

 さて,始業式でのお伝えしたメッセージの中で,「どんな困難があってもそれを乗り越え、立ち上がっていく力を日々の学習の中から身に付けていってほしい」という「レジリエンス」という話をお伝えしました。ある時,生徒の方から,「どうすればそういう力が身につくのですか?」という質問を受けたことがありました。皆さんならどう考えますか?

 私の答えはこうです。第一に自分に課せられた又は自ら課した毎日の積み重ねを丁寧に心を込めて継続していくことです。毎日の授業もその心構えで積極的に参加してください。第二に大切なことは,「自分の苦手なことに敢えて挑戦する」ということです。楽なことよりは,少々の困難を選んでください。得意なことも大事ですが,苦手なこともやってみてください。好きなものだけを食べていても,健康な体にはなりません。いつも真ん中にいる人は,端っこに寄ってみてください。いつも後ろの人は前に行ってみてください。確実に見える風景が変わるはずです。いつも同じではない,視点の幅を持つということが,自分自身の思考の土台を大きく広げます。それが立ち上がる時の力の源に繋がるはずです。

  令和4年度後半の加美農を、一人ひとりの力を最大限に発揮して盛り上げていってほしいと願います。加美農生はこんなものではない,まだまだ出し切っていない余力が眠っているはずです。

 皆さんのさらなる活躍と成長を心から期待して,後期始業式の講話といたします。

「命」に触れる学び-コロナ禍の学校生活

 新入生54名を迎え,令和4年度が始まりました。拡大が続く新型コロナ対策の中で,生徒の皆さんは毎日の授業をはじめとした実習や学校行事,部活動にも意欲的に取組んでいたと思います。

 今年5月には3年ぶりとなる全校田植えを実施しました。心を一つに農業高校ならではの伝統行事の「誇り」を体感することができたのではないかと思います。皆さんの真剣な眼差しと団結の笑顔こそが本校の活力の源だと実感した次第です。

 部活動では,地区総体及び県総体が無事開催となり各部大いに健闘しました。特に相撲部の6年ぶりンターハイ出場。また農業クラブでは,平板測量競技で二連覇を達成。他にも5年ごと開催の全国和牛共進会高校の部出場で優秀賞や意見発表県大会優秀賞,情報処理競技優秀賞など,皆さんの生き生きとした活躍が各所でありました。皆さんの活躍を頼もしく思う反面,加美農生の底力ならば,もっともっとできるはずだという欲も湧いてきます。自分の可能性を限定し決め付けるのはもったいない。精根尽き果ててはじめて自分の限界が分かるのです。挑戦する精神にこそ道が拓けます。失敗を恐れずにチャレンジする精神を。特に3年生は最後の仕上げの夏です。自分の未来にしっかりと向き合い,悔いのない夏休みを過ごしてください。

 さて,今日は「命」というテーマで話をしたいと思います。皆さんは日々の学習や実習を通じて,多様な生き物の「命」と向き合っています。そして世界に目を向ければ,コロナ感染によって亡なる方,自然災害や戦争の犠牲で命を落とす方もいます。こうした生と死の現実をどう考え,何ができるのかということは,これからも考えていってほしいテーマです。なぜなら,そうした知らない人の生活や命と,私たちの命とはどこかで繋がっているかもしれないという思いがあるからです。現代の生物学の知見によれば,DNAの解析によりこの地球上に現存する生物は一つの祖先の子孫であるという研究成果がありました。もしそうだとすれば,すべての生命が種別や国境を超えて繋がっているとも言えるのです。

 農業教育の根本は命に向き合う学習です。私は命と向き合いながらひたむきに生きている人が一番尊いと思っています。これから社会を担う皆さんはそういう自信と自覚を持って生きていってほしいと思います。

 先日ある本を読んでいて「命は誰のものか」という一文と出会いました。「あなたの命はあなたのものではない」というのです。自分の命は自分ものだと確信的に思い込んでいたのですが,そうではないのだと。それは近代以降の発想であって,あなたの命はあなたが作ったものでも,ましてや買ったものでもない。確かに与えられた命なのです。私の解釈は,自分の命は自分のものだけれども,自分だけのものではない,多くの縁ある人との繋がりの中にあるという考えに至りました。

 長引くコロナ感染という先行き不透明な時代の中で,いまなお不安がある人も多いと思います。しかしながら,こうした困難時代だからこそ,自分と周りの人の命を大切に思いながら,これからの人生を力強く切り拓くための言葉=信念が持てるような知的冒険をしながら,有意義な夏休みを過ごしてほしいと切に願います。

 以上で,休み前講話を終わります。夏休み明けにはまた全員元気に再会しましょう。

令和4年度 入学式式辞

 ただいま、入学を許可いたしました農業科二十二名、農業機械科二十二名、生活技術科十名の新入生の皆さん、御入学おめでとうございます。皆さんは自らの志によって高校入試の関門を突破し、義務教育課程を修了後、高校生活への期待と不安の入り交じった中で、本校入学の日が来ることを心待ちにしていたものと思います。高校への進学は、進路選択大きな一歩です。今日から晴れて加美農業高等学校の生徒となり、希望に満ちた学校生活がスタートします。教職員・在校生一同、新入生一人一人を心から歓迎するとともに、加美農生として共に学べることに大きな喜びを実感しております。

 振り返れば、皆さんが今日ここにこうしているのは、決して自分一人の力によるものだけではありません。これまでの十五年間を時に厳しく時に優しく慈しみ育んでこられたご家族の惜しみない愛情と、義務教育の九年間を通じて熱心にご指導くださった多くの先生方、そして遠く近くで常に見守ってくださった地域の方々の熱心な支えによって導かれてきたのであります。改めて今日、これまで心を寄せてくださった方々の願いを心に刻み、感謝と決意の心をもって高校生活の第一歩を踏み出していってほしいと思います。 

 さて、加美農業高等学校は、明治三十三年の開校以来、今年で百二十二年の歴史を刻んで参りました。長き歴史と伝統を誇る本校は、農業のスペシャリスト育成を担う目的により、地域の皆様方からの期待に応えるべく日々発展進化していくことを使命としております。その使命を実現するために、自身の心を耕すという意味で、『耕心』という言葉が校訓となっています。土を耕すのと同じように、心を耕す。本校はこの校訓のもと、高い志を持ち、自ら意欲的に学び、情操豊かで、心身ともに健全な品格のある生徒、そして、社会性を身につけ地域を支える人材の育成を目指しております。これまで実に多くの卒業生が、地元はもとより、県内外、各方面で活躍されております。新入生の皆さんも、今日から加美農業高校の一員として常に高い志を持ち、多くの先輩方と同じように、社会の中枢で活躍できる有能な人材として社会に羽ばたいていくことを期待しています。 

 ここで、これからの本校を担う新入生の皆さんに、二つお願いをします。

 一つは、「〈夢〉を持ち続ける」ということです。何か一つどんな小さな事でもかまわない。自分がそうありたいと願う大いなる理想に向かって粘り強く努力していってほしいのです。この不透明な時代にあって、本校での三年間の学びは、必ずや皆さんの夢の実現のための礎となるものと確信しております。自分一人であきらめてしまいそうなときは、先生や同じ仲間と励まし合い、切磋琢磨しながら、夢の実現に向かって突き進んでもらいたいのです。そのとき大事なことは挑戦する意志、チャレンジする精神です。人は時に安定を求めるあまり、変化を恐れて立ち止まってしまうものです。しかし、変革を恐れていては夢の実現はありません。高校での学習活動は挑戦の連続です。一歩踏み出す勇気と、新しい自分との出会いを果たしていってください。必ずやそれがかけがえのない財産となって、揺るぎのない自信を与えてくれるに違いありません。

 二つ目は「〈思いやりの心〉を持ち続ける」ということです。

 人は一人では生きてはいけない存在です。必ず誰かとの、あるいは何かとの関わりの中で存在しています。だからこそ、自分と関わるすべての人や物の尊厳を認め、思いやってほしいのです。教室の中で、寮の中で、家庭の中で、自然の中で・・・。この不安の時代に求められていることは明瞭です。「対立」ではなく「対話」。「自己を主張すること」ではなく、「他者を受容すること」です。お互いの違いを違ったままで尊重し合いながら相手を思いやる。そんな寛容な広い心を持った生徒になってください。日常の些細な出来事に一喜一憂してしまうこともあるかもしれません。それでもなお、思いやりの心を忘れないでください。難しいことではありません。隣にいる友だちに笑顔で「おはよう」と挨拶する。その一言がどれだけか人の心を癒やすはずです。困っている人や悩んでいる人がいたら、迷わずそっと手を差し延べてみてください。そのぬくもりに確かな答えがあるはずです。

 この二つの事を、今日から行動に移してみてください。きっと何かが変わっていくはずです。 

 さて、農業の「農」という字には、「実る」という意味があります。農業とは命の営みそのものです。じっくりと土を耕し、心を耕し、苦労や喜びを寄せ合いながら、豊かな実りを迎え入れられるよう、希望の種を蒔いていってください。自然の厳しさ優しさと対話をしながら、大地に根ざす力を尊び、理想の志を高く掲げてください。皆さんのそうした確かな学びを、本校農業教育は保証し続けます。もちろん、人間は迷い間違う存在です。つまづき倒れることもあります。それでもなお、立ち上がっていくしなやかさと芯の強さを、本校の広大な自然環境の中で育んでいくことを心から願っています。

令和4年度 始業式あいさつ

 このたび,宮城県図書館からの異動により赴任いたしました根岸一成といいます。どうぞよろしくお願いします。先ほど新任式にて13名の転入の先生方を紹介していただきました。また今年度は,54名の新入生が入学してきます。新入生は高校生活への大きな期待と同時に不安も抱えているはずです。特に,耕心寮での寮生活は不安が大きいものと思います。皆さん一人一人の溌剌とした姿勢が、本校生のお手本になります。後輩を導くよき先輩として後輩を暖かく迎え入れてほしいと思います。

 さて,始業式にあたり、校長先生から皆さんへメッセージが3つあります。

 1つは、今年の4月1日から民法の改正により成人年齢が20歳から18歳に引き下げられたということです。何が変わったのかといえば、18歳になった人は親の親権には服さず、法律上も独立した大人として扱われることになります。誕生日を迎えた3年生は、正真正銘の「成人」となります。では、成人になるとはどういうことなのでしょうか? 一言で言えば、「社会的責任」が生じるということです。これまでは誰かが代わりにやってくれていたことが、これからは自分自身の責任において行う場面が増えるということです。学校内だけでなく、学校外においても今まで以上に、責任ある言動や行動を心がけてほしいと思います。

 2つ目は、失敗やつまずきのなかに、新たな創造が生まれるということです。人間は迷い、つまずく存在です。大事なことは、そこから前を向いて立ち上がるということです。心理学ではこれを「レジリエンス」(回復する力)と言います。皆さんにはどんな困難があってもそれを乗り越え、立ち上がっていく力を日々の学習の中から身に付けていってほしいのです。

 これまで人類がいくどの疫病や自然災害を乗り越えて何千年も前から今日まで生き抜いてきたのは、この回復する力のDNAが備わっていたからなのだと思います。現在の感染状況も同様です。現在のマイナス状況を乗り越え、ここから立ち上がっていくためにも、力と知恵を結集して前に進んでいきたいと思います。 

 3つ目は、新型コロナウィルスの感染状況は続いていますが、基本的な対策をしながら、学校行事は進めていきたいと思います。そのためにも、皆さんの日頃の一人一人の協力がぜひ必要です。そして自分と、そして周りにいる仲間を思いやること。そのことを常に忘れないでください。思いやるとはどうする事なのかを皆さん一人一人が考え、実践して欲しいのです。答えは見つかるはずです。1日1回でいい、それを実践に移してください。必ず何かが変わっていくはずです。

 令和4年度の加美農を、ここにいる一人ひとりの力で盛り上げていってほしいと願います。そして校長室のドアはいつでも開かれています。何かお話したいことがあれば、いつでも来ていただいて構いません。